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一般講演(ポスター発表) P3-055
日本には重金属が高濃度で含まれている土地でも植物が繁茂している地域が存在する。植林に成功した日立鉱山もその一例である。このような植物の根の周辺に生息する根圏微生物の中には植物の栄養吸収に関与しているだけでなく、不溶性重金属を可溶化させる物質(siderophore)を放出することで植物の重金属吸収に関与していることが知られている。本研究では日立鉱山に自生するドクセリ(Cicuta virosa L)と根圏微生物が、ドクセリの重金属吸収にどのように関わっているのかを野外の調査を通じて、解明することを目的とした。
2006年6〜9月、2007年4,5月にかけてドクセリ、土壌、および水を採取し、日立鉱山に多いと報告のあるCu, Ni, Zn, Cd, Pbの含有量をICP分析により調べた。また、細根から内生細菌の分離を行った。さらに、分離された細菌が不溶性重金属を可溶化させるsiderophoreを産生しているかを検証するために、根圏の環境を再現したRSM培地を用いて細菌を培養し、そのろ液と現地土壌を混和し振とうさせることで不溶性重金属の可溶化を検討した。
その結果、土壌中にはCu, Zn, Pbが高濃度で存在したが、水中では検出限界以下であった。交換態のCu、Zn、Pbは低濃度であった。また、ドクセリの地上部、地下茎に比べて細根には高濃度でZnが存在しており、ドクセリの細根は土壌中の不溶態のZnを吸収することが示唆された。内生細菌の分離の結果、65菌株が分離され、そのうち12菌株がsiderophoreを産生し、土壌中のZnを可溶化していることが示唆された。以上のことから、ドクセリのZn吸収に内生細菌が産生するsiderophoreが関与しているのかを接種実験によって現在検証中である。