| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-060

光環境・個体密度がテツカエデ稚樹の成長様式に与える影響

*齊藤わか(京大・農),河村耕史(森林総研),武田博清(京大・農)

木本植物の樹冠構造は、同種内であっても生育する環境に応じて形態的に変異することが知られている。木本植物の生育や生存には光環境が特に重要である。そのため、光環境に対応する樹冠の変異に着目した研究は多数行われている。また個体の生育密度も、光資源の獲得競争を通じて個体の生育や生存に影響するため重要であり、個体密度に着目した研究も多数存在する。しかし光環境・個体密度の両者は総合的に影響しているため、2要因をどちらも考慮して可塑性を明らかにすることが望ましい。

そこで本研究では、稚樹の構造とそれをつくり出す成長様式の光環境・個体密度のそれぞれに対応する可塑性について調査した。研究材料にはカエデ科テツカエデの稚樹を用いた。京都大学芦生研究林を調査地とした。研究林内では近年増大傾向にあるシカ食害の過程を経て、テツカエデ稚樹が林床を優占している林分が多く見られる。このような林分において様々な光環境・個体密度で成育するテツカエデ稚樹を採取した。採取した個体はそれぞれ葉面積・枝長・年枝長・枝分かれ構造・葉重量・枝重量・当年枝重量を分枝オーダーごとに計測した。

光環境に関して、明るくなるにつれて稚樹のLAIが増加していく傾向が見られた。また個体密度に関しては、密度が高くなるにつれて稚樹の樹冠が縦長になる傾向が見られた。主幹からの分枝様式には、光環境と個体密度の両方に対応した可塑性が見られる。このような結果をもとにテツカエデの可塑性と稚樹の樹冠成長に光環境・個体密度が与える影響を詳しく検討する。

日本生態学会