| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-065
森林の生産力を求めることは,森林による大気中の二酸化炭素濃度の制御への効果を知る上で重要である。今後は都市域においても緑地機能の一つに考える必要がある一方で、都市緑化による二酸化炭素固定効果がどの程度期待できるかは、まだ明確になっていないのが実情であり、基礎的なデータの蓄積が望まれている。
1970年代より生態学的な手法に基づいて人工的に自然林を造成しようとする環境保全林形成の試みが行なわれてきた(宮脇ら 1993)。これは特に工場周辺や道路のり面など造成工事によって新たに生じた裸地に、その立地に本来生育する高木になる樹木の幼苗を密植混植し、立木密度の高い樹林を作り出そうというものである(長尾ほか 2003)。環境保全林に対して定量的に物質生産などに関する研究が直接的に行われた例は少ない。
調査は新日本製鐵株式会社大分製鐵所構内に造成された植栽後約30年を経た照葉樹環境保全林で行なった。調査地内で伐倒調査(クスノキ・タブノキ・アラカシ・ホルトノキ・マテバシイ)を行い、相対生長関係を求めた。同時に毎木調査を実施し相対生長関係を適用して地上部現存量を求めた。またリタートラップを林内に設置し4年間に渡って月一回の回収を行った。
調査地の地上部現存量は327.3t/haであった。また年平均のリターフォール量は6.74 t/ha(4.69-8.24 t/ha)となり、そのうち落葉量は78.5%を占めた。さらに試料木の樹幹解析の結果から最近5年間の年平均生長を求めたところ、林分生長量は22.6t/haと推定された。植栽後30年を経過した常緑広葉樹林としては比較的大きい値を示した。またその要因について検討した。