| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-067

絶滅危惧種タコノアシの種子発芽特性

*畑中由紀,比嘉基紀,大野啓一(横国大・院・環情)

タコノアシPenthorum chinense は河川の氾濫原や泥湿地などに生育する多年草である。近年、河川環境の人為的改変により個体数が減少しており、現在では準絶滅危惧種(NT)に指定されている。タコノアシは先行研究より、地表攪乱によって形成された裸地的環境に出現する先駆植物で、種子にはギャップ検出機構を備えていることが報告されている。しかし、木曽川感潮域ではアカメヤナギ群落の林床でも多くの個体が確認された。そこで本研究では被陰環境での種子発芽特性を解明することを目的に、光量と光質の実験を行った。

光量実験では、光量0%、6%、12.5%、25%、50%、100%、の6条件とした。光質実験では、赤色光(600nm)、緑色光(530nm)、青色光(440nm)、コントロールの4条件にそれぞれ近赤色光(670〜700nm)を加えた8条件で行なった。実験は、温度条件15-25℃、光条件(50〜60μmols-1m-2)暗-明を各12時間に設定したインキュベーターを用いて計31日間行なった。幼根が出た時点で発芽とみなし、発芽した種子はその場で取り除いた。

光量実験では12.5%、25%、50%、100%で発芽がみられ、発芽率はそれぞれ43%、77.8%、83.1%、83.8%だった。0%、6%では発芽はみられなかった。光質実験では、赤色光は近赤色光の有無に関わらず発芽がみられた。緑色光+近赤色光では発芽がみられなかったが、緑色光のみでは発芽がみられた。青色光では近赤色光をカットしても発芽はみられなかった。これらのことから、タコノアシノの種子は光量12.5%約6〜7.2μmols-1m-2以上の光量で発芽可能であり、近赤色光と青色光は種子発芽を抑制する要因と考えられた。

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