| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-071
樹木の結実豊凶を説明する仮説の一つとして、豊作年の結実が貯蔵資源の過剰消費を促し、その再蓄積に長期間を要するという資源制約仮説が提示されている。これまでに結実量を制約する資源として炭水化物を想定して、結実期とその前後における貯蔵炭水化物量の変動を追跡した研究がいくつかなされているものの、その結果は様々である。一方で、窒素も樹木の成長・繁殖に不足しがちな資源であることが広く知られている。そのため種子散布に伴って失われた窒素の再蓄積が、炭水化物以上に樹木の結実を制限していることは十分考えられる。そこで発表者らは、新潟県の苗場山山麓のブナを対象に、05年に生じた豊作後のブナにおける貯蔵資源量の変動を追跡している。本発表では、05年豊作年以降の枝・幹・根における非構造性炭水化物(NSC)濃度の変動について報告する。
調査は苗場山山麓に生育するブナ4-6個体を対象に行った。05年11月より樹冠上部の枝および幹・根の材のコアサンプルを定期的に採取し、枝は年枝ごと、材は深度別に分けて、各部分のNSCを、可溶性糖分とデンプンとに分けて定量した。
NSC濃度は、サンプリング時期によらずに枝、根、幹の順で高かいものの、差は小さく、幹・根の貯蔵炭水化物も無視できないことが示された。幹・根では、糖分濃度はコアの深度間で差がないのに対し、デンプンは最外層で顕著な貯留がみられたことから、根・幹では、辺材の外層が主な炭水化物貯蔵部位であることが示唆された。06年においては、糖分濃度は生育シーズンを通して徐々に上昇したのに対して、デンプン濃度はシーズン初期に大きく上昇し、落葉-休眠期に低下した。その結果根・幹のNSC濃度は、05-06年にかけて僅かに上昇する傾向が示された。発表では07年度の結果を加えて、豊作年後のブナの貯蔵炭水化物の動態について考察する。