| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-072

ナンキンハゼの雌性先熟個体と雄性先熟個体の繁殖特性の違い

*角倉惇一・千田雅章・名波哲・伊東明・山倉拓夫(大阪市大・理)

ナンキンハゼ(Sapium sebiferum)は、種内に雌性先熟個体と雄性先熟個体が混在する異型異熟の高木である。雌性先熟個体は、雌花、雄花の順に開花する。一方、雄性先熟個体では、雄花、雌花の順に開花した後、もう一度雄花が開花する。本研究では、ナンキンハゼの繁殖特性に注目し、調査を行った。(1) 開花フェノロジーを見ると、雄性先熟個体の雄花と雌性先熟個体の雌花、雄性先熟個体の雌花と雌性先熟個体の雄花の開花期は同調した。また雌性先熟個体では、個体内で雄花と雌花の開花期がほとんど重ならないのに対し、雄性先熟個体では、雌花と二回目の雄花の開花期に重なりが見られた。(2) 奈良県御蓋山に設置された8 ha調査区内の胸高直径5 cm以上の128個体では、非開花、雄花のみ、雌性先熟、雄性先熟の4つの開花タイプが確認された。雌花のみを開花させた個体は、観察されなかった。(3) 雄花のみを咲かせた個体の開花期は、多くの場合、雄性先熟個体の雄花の開花期と一致した。(4) 2006年と2007年の開花タイプと比較すると、非開花から雌性先熟、雄性先熟へ変化した個体がそれぞれ1個体、雄性先熟から雌性先熟へ変化した個体が2個体見られた。(5) タイプ間で胸高直径を比較すると、非開花個体と雄花のみの個体は、雌性先熟個体と雄性先熟個体に比べて有意に小さかった。(6) 胸高直径に基づいて、集団を大小2つのクラスに分割した。小さいサイズクラスでは雌性先熟個体の個体数が、雄性先熟個体に比べて有意に多かった。しかし大きいサイズクラスではその偏りはなくなった。繁殖可能なサイズの閾値は、雌性先熟個体のほうが雄性先熟個体よりも小さいのかもしれない。以上のように、ナンキンハゼの雌性先熟個体と雄性先熟個体の間には、さまざまな生活史特性の差があると考えられる。

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