| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-074

雌性両全異株ナニワズの繁殖特性

*山下直子(森林総研関西),河原孝行(森林総研北海道),倉本恵生(森林総研北海道),Thomas Lei(龍谷大学理工学部)

ナニワズは、本州北部から北海道に分布するジンチョウゲ科の低木種で、落葉広葉樹林の林床に生育している。この植物は、雌性両全異株性を示し、両性花は機能的にほぼ雄花であり、雌花は見かけ上両性花をもつが、雄しべに花粉が入っておらず雌花の機能をもつ。一般に雌雄異株の植物は、雌雄の繁殖コストが異なり、それが開花数や開花頻度、性比、サイズや成長といった生活史特性や、葉の光合成速度などの生理特性に反映されることが報告されている。またこの植物は、春先に開花した後に、初夏に結実、落葉し、秋に展開した葉がそのまま越冬するという、一般の植物とは逆のフェノロノジーをもつ。この夏落葉性というフェノロジーは、上層の植物が開葉する前の比較的明るい春先と、それらが落葉して再度林内が明るくなる晩秋以降に積極的に光合成をおこない、夏は葉を落として無駄なコストをかけないという、落葉広葉樹林内の光環境への合理的な適応戦略であることが示唆される。そこで本研究では、ナニワズの開花結実特性と形態・生理的特性について調べた。その結果、地際径、シュート長は雌株、両性株で差は認められなかったが、葉と花の数は、雄株が雌株よりも有意に多かった。最大光合成特性は、両性株の葉が雌性株の葉よりも有意に高かった。最大光合成速度の温度依存性は、約15℃でピークとなり、ほぼ同じ時期に測定された他の冬落葉性の樹種と比べてより低温に光合成が適応している可能性が示唆された。また、人工受粉試験をおこなった結果、結実率は雌株が雄株よりも高く、強制自家受粉では雄花は結実しなかったが、同じ個体の違う花の花粉による強制受粉では結実が確認されたことから、自家和合性であることが明らかとなった。

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