| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-075

サワギキョウにおける花序内花間性投資パターン:花序サイズによる違い

*板垣智之, 酒井聡樹(東北大・院・生命)

花序の大きさが、花間の性投資量の違いに与える影響を調べた。花序の大きさは個体の資源量と関係がある。個体の資源量が大きい場合、花数を増やすか花あたり資源量を増やすかのどちらが考えられる。花序の大きさは、花あたりの投資量にどう影響するだろうか。本研究では、青森県八甲田山の2集団のサワギキョウを材料にした。花数の異なる株ごとに、花あたり花粉・胚珠数を開花順の異なる花間で比較した。

その結果、2集団とも、花あたり胚珠数は、花数が多い株ほど開花の遅い花で少なかったが、花数が少ない花では花間で差は見られなかった。一方で、花あたり花粉数は、どの花数の株でも花間で差は見られなかった。これらのことから、雌器官への投資についてのみ、株の花数に依存した性投資パターンであることがわかった。また、同じ花数の株では、株サイズおよび花あたり花粉・胚珠数に集団間で差はなかった。このことから、株の資源量によって、花数と花あたり資源量が決まると考えられる。

花序の大きさに依存した雌器官への投資パターンには、花序内の花間の資源競争が影響していると考えられる。一般的に、花序構造の制約や成熟期間の長さのため、開花の早い花が多くの種子生産をすることが有利である。株の資源量が多い株は、多数の花をつけるが、開花の遅い花では強い資源制約が起こり、雌器官への投資量が少なくなっていると考えられる。

日本生態学会