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一般講演(ポスター発表) P3-083
植物種の交配様式は送粉様式や開花フェノロジー、生活形、近交弱勢によって特徴付けられる。混合交配様式を示す種では、これらの要因により集団間や集団内の家系間、家系内の果実間で他殖率が大きくばらつく場合がある。本研究では自家和合性、虫媒、雌性先熟で混合交配様式を示すモクレン科の木本種であるシデコブシを対象に、交配様式の階層構造を明らかにすることを目的とした。5つのシデコブシ集団から全部で56家系、204果実、1498個の種子と家系親の葉を採取した。改変CTAB法でDNAを抽出し、核SSRマーカ6座を用いて遺伝子型を決定した。家系親と種子の遺伝子型から各種子が他殖に由来するかどうかを直接判定した。Nested-ANOVAを拡張した階層ベイズモデルを用いて(1)種/集団/家系/果実という各構造における他殖率を構造内の分散と共に推定した。さらに(2)各構造ごとにデータをプールする、(3)下位の構造ごとに平均値を計算するという2つの従来の方法で各構造の他殖率を推定した。
階層ベイズモデルによる種レベルの他殖率(1)は平均0.732(0.604-0.830, 95%CI)で、従来の方法による推定値((2)0.652, (3)0.666)よりも0.1程度高い値を示した。全体的な傾向として、従来の方法は他殖率が0.8以下の場合は階層ベイズモデルよりも他殖率を過小評価、0.8よりも高い場合は過大評価していることが明らかとなった。また、集団間の他殖率の分散は平均0.209(0.029-0.841, 95%CI)、集団内の家系間の値は平均1.649(0.843-2.869)、家系内の果実間の値は平均1.119(0.580-1.870)を示し、集団内の家系間の値が集団間の値よりも有意に大きいことが明らかとなった。