| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-085

ニセアカシア種子の種皮の不透水性とその変化

*唐木貴行(北大農),近藤哲也(北大院農),渡邉陽子(北大FSC),門松昌彦(北大FSC),秋林幸男(北大FSC),笹 賀一郎(北大FSC),斉藤秀之(北大院農),渋谷正人(北大院農),小池孝良(北大院農)

ニセアカシア (Robinia pseudoacacia L.) は北米原産のマメ科植物で,緑化樹や街路樹として日本各地に植栽され,蜜源植物としても利用されており,資源としての価値は高い。一方,ニセアカシアは現在その旺盛な繁殖力と成長の速さによって森林や河川敷に分布を拡大し,在来植生の林分構成や生態系に影響を与えている外来種である。適切な管理手法が求められる本種において,分布拡大に寄与していると考えられる種子による繁殖特性の解明は重要である。

ニセアカシアの種子は,不透水性の種皮を持ち,物理的休眠をする硬実種子が多いが,中には種皮に透水性のある非休眠種子が存在する。硬実種子と非休眠種子の2つのタイプの種子が散布されることが,ニセアカシアの分布拡大に寄与している可能性がある。本研究では,ニセアカシアの非休眠種子の種皮の,透水性のある部分 (吸水部位) に着目して,吸水部位の特定と構造の特徴を調査した。

吸水部位として考えられる組織として,へそ (hilum) や種阜 (strophiole) が挙げられるが,へそが吸水部位である可能性を検討するためにワセリンを塗布した吸水実験を行った。へそにワセリンを塗布し,ワセリンを塗布していないもの,種子全体に塗布したものと吸水率を比較した。また,吸水部位の特定を行うため,染色液を種子に吸水させ,吸水した種子を切断し,断面を光学顕微鏡で観察した。これらの研究を基礎として,特定された吸水部位を中心に,結実後の時間経過による吸水率と種皮構造の変化について研究を進め,非休眠種子の形成プロセスと生態的特徴を究明する。

日本生態学会