| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-087
雌の繁殖成功を制限する至近的要因には花粉制限や資源制限、食害等の要因がある。ポリネーターを多く誘引するためにディスプレイサイズを大きくすることは、花粉制限を克服し結果率を高めるのに有効であると予想される。しかし雌雄異株植物の場合、一般に雌個体の開花量は雄よりも少なく、繁殖成功に対する雌のディスプレイサイズの有効性はよくわかっていない。そこで低木種シロモジを対象に、雌の繁殖成功に及ぼす要因としてディスプレイサイズの有効性と、さらに周辺雄花密度、周辺他樹種個体の局所混合い度の影響を調査した。野外調査は長野県赤沢ヒノキ林内の4haプロットにおいて行い、3年間継続して開花量と結果量を調査した。2004、2005、2006年の各年における集団の開花個体数は258、333、263個体であり、いずれの年においても性比は約0.7と雄に有意に偏っていた。2004年における集団全体での開花した雄花序数は2005年、2006年に比べて少なかった。開花終了1ヵ月後における初期結果率も2005、2006年に比べて2004年は有意に低かった。初期結果率に対して雌のディスプレイサイズは、2004年においては有意に正の効果を及ぼしていたが、2005、2006年は有意ではなかった。この結果から、集団として開花量の少なかった2004年においては、雌のディスプレイがポリネーターを誘引するのに貢献していたと考えられる。それに対して、2005、2006年は雄の開花量が比較的多く、花粉制限より資源制限が強く作用したものと考えられる。また、いずれの年においても周辺雄花密度は初期結果率に対して正の効果を、周辺他個体の混み合いは負の効果を及ぼしており、周囲の空間構造も雌の繁殖成功に影響することが明らかとなった。