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一般講演(ポスター発表) P3-088
種子散布様式や花粉媒介者の違いは、繁殖成功や空間分布構造に影響を与えると考えられるが、直接的にこの仮説を検証した例はほとんどない。この研究では、異なる種子散布様式(風、重力)や花粉媒介者(ハチ、甲虫)をもつフタバガキ科4種の種子・花粉散布パターンを稚樹のDNAから推測した。
調査は、マレーシアサラワク州ランビルヒルズ国立公園で行った。種多様性の高いフタバガキ科の種は、同じ科・属内でも異なる種子、花粉媒介者をもつ。そこで、この科のなかから種子花粉散布の異なる4種を選択した。それは、 Dipterocarpus globosus (種子に翼あり、オオミツバチ媒), D. tempehes (種子に翼なし、オオミツバチ媒), Shorea beccariana (種子に翼あり、甲虫媒), S. laxa (種子に翼なし、甲虫媒) である。
この4種の成木を80haプロット内すべて、稚樹を0.8-4haのコアプロットからランダムにサンプリングし、マイクロサテライトマーカー5−6遺伝子座を用いて遺伝子型を決定した。その後、最尤法、ベイズ法を用いて種子・花粉散布距離の推定を行った。
4種すべてで、ほとんどの稚樹は樹冠下に集中するものの、風散布種、D. globosus と S. beccarianaは、重力散布種D. tempehes とS. laxaよりも広範囲に散布される傾向が見られた。また、林冠よりも離れた場所に散布されている個体があったことから、二次散布の可能性が特にD. tempehes とS. laxaで示唆された。花粉散布については、ハチ媒だけでなく、甲虫媒の種も長距離の散布が見られた。そのパターンも種に応じて異なっていた。