| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-089
その1(本大会口頭発表B1-13)から近傍の外来種が在来種の結実を阻害することが示されたが、その直接的な要因が外来種からの種間送粉であることを明らかにするため、人工授粉による操作実験を行った。ポット植えにした在来種2株からなる対照区と、在来種2株+外来種1株からなる処理区について、人工授粉を行い結実率を計測した。その結果、結実率は対照区では平均で約68%であったのに対し、処理区では約45%に低下した。この実験では株ごとにポットに植えられているため、結実率低下の要因は外来種からの送粉であり、栄養塩類や水・光などをめぐる競争ではないことが確認された。さらに、この実験で導入された外来種は1株だけであったが、野外では外来種が在来種を圧倒していることも多く、野外では本実験で示されたものよりさらに大きな影響が作用していると考えられる。
外来種によるこの強力な繁殖干渉の作用は、野外ではどの程度の範囲に及ぶのだろうか?その空間スケールを明らかにするため、大阪市と東近江市で調査を行った。開花中の外来タンポポ頭花に蛍光顔料を振りかけ、その6時間後に周囲の在来タンポポから柱頭を採取した。在来タンポポ柱頭から蛍光顔料が検出された場合、顔料を施用した外来タンポポからの送粉があったとみなした。その結果、いずれの調査地でも外来種株に近いほど高頻度で種間送粉が生じ、離れるに従ってその頻度は低下した。LD50と同様に半数送粉距離を求めたところ、大阪市と東近江市でそれぞれ1.6m, 5.3mであり、結実率を基準にした計測と同じオーダーであった。
これらの結果より、在来タンポポの繁殖成功は外来種によって強く阻害されていること、その要因は種間送粉であること、その影響は数メートルの空間スケールで作用していることが明らかになった。