| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-093
単性花植物は、種子生産に至る雌花と、種子生産しない雄花とで資源の分配を変え、繁殖に投資される資源を効率よく配分していると考えられている。一方、両性花植物では、全ての花が種子を生産する能力をもつ。しかし、成熟果実となり種子生産に至る花は一部にすぎない。そこで、両性花植物においても効率よく資源配分を行なうため、最終的に種子生産に至る花とそうでない花とで、資源投資量が異なるのではないかと考えた。調査は、愛媛大学農学部附属演習林において、ムラサキシキブ属2種(ムラサキシキブ・ヤブムラサキ)を対象に行なった。ムラサキシキブ属2種の、つぼみから成熟果実までの各発達段階で、繁殖器官への資源投資量と残存率を求めた。本研究では、脱落した繁殖器官の資源量や、強制受粉を行なった個体の残存率と比較し、ムラサキシキブ属2種の繁殖戦略を調べ、仮説の検証を行なうことを目的とした。
個々の繁殖器官の乾燥重量から、ムラサキシキブでは重い花と軽い花が存在することが確認された。ヤブムラサキでは、異なるサイズの花は確認されなかった。さらに、脱落した花は、脱落しなかった花よりも軽い傾向にあった。1個体がつける花の平均個数は、ムラサキシキブの方が多かったが、繁殖器官の残存率に有意な差は認められなかった。また、両種ともに、強制受粉を行なった個体と行なわなかった個体で、繁殖器官の残存率に差が無かったことから、花粉制限の結実率への影響はないと考えられた。
今回の結果より、ムラサキシキブは重さの異なる二型の花を多く作り、種子生産に至りやすい花を残し、そうでない花を脱落させて資源の損失を抑える戦略を持つことが分かった。