| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-103

生育期間の違いが一回繁殖型多年草ミヤマリンドウのシュート成長と生存に及ぼす影響

*川合由加,工藤岳(北大・環境科学)

高山帯では雪解け時期が異なる場所がモザイク状に形成される。高山植物の生育開始時期は雪解け時期に起因するため、非常に狭い地域内に年間の生育期間が異なる個体群が分布している。このため、雪解け傾度に沿って広い分布域を持つ種は、生育期間の違いに対して何らかの生活史適応持っていると考えられる。

ミヤマリンドウは本州から北海道の高山帯にかけてごく普通に見られる多年生草本で、雪解け傾度に沿って広い分布域をもつ。ミヤマリンドウのシュートは、毎年、数枚ずつ常緑葉を生産、蓄積し、ある程度の葉数に達すると先端に花芽を形成して、開花・結実後はラメット全体が枯死するという一回繁殖型様式を持つ。このため、シュートの年間成長量や繁殖への投資量を比較的容易に測定することが可能である。これまで、雪解けの早い場所と遅い場所のミヤマリンドウの個体群間で、その成長・繁殖サイズ・生存率といった生活史特性の比較をおこなった。その結果、雪解けの早い場所の個体では、年成長量と繁殖サイズが大きいが、死亡率が高く、一方で、雪解けの遅い場所では年成長量と繁殖サイズは小さいものの死亡率が低いなど、個体群間で異なる生活史特性がみられた。

そこで、このような雪解け傾度にそった個体群間での生活史特性の違いが、可塑的なものなのか、内的に固定されたものなのかを検証するため以下の実験を行った。2005年10月に雪解けの早い場所(KE)と遅い場所(KL)の個体を相互移植し、その後2年間、成長量、繁殖サイズ、生存率、開花日を記録した。

その結果、開花時期は移植後も移植前の個体群の特性を保ち、雪解けの遅い場所に生育していた個体は開花に対して低い温度要求性を示し、早く開花する傾向が見られた。どちらの生育場所の個体も、KEに移植した方が死亡率が高かった。また、本来の生育地とは異なる環境へ移植した個体は、繁殖サイズが減少した。

日本生態学会