| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-104

徳之島三京地区天然林におけるオキナワウラジロガシの堅果生産

*平山大輔(三重大・教育(非常勤)),香山雅純(森林総研・九州),舘野隆之輔,川路まり,北岡和彦,米田健(鹿児島大・農)

奄美および琉球諸島の固有種であるオキナワウラジロガシ(Quercus miyagii)の堅果生産とその年次変動を解明するため、奄美諸島の中部に位置する徳之島の天然林において調査を開始した。2007年9月に、徳之島三京地区の天然林から胸高直径の異なる12個体のオキナワウラジロガシを選び出し、それぞれの樹冠下の林床に、4から10個(合計69個)の種子トラップを設置した。トラップ設置個体のうち、最もサイズの小さい個体の胸高直径は21.6 cm、最も大きい個体の胸高直径は111.9 cmであった。月ごとに、トラップ内に落下した繁殖器官を回収し、一年目の結果を得た。

2007年には、全12個体69個のトラップから回収された成熟堅果数は0であった。この結果は、この森林のオキナワウラジロガシ個体群の堅果生産が同調して凶作であったことを示す。また、繁殖器官の中絶や種子散布前被食などにより成熟に至らずに落下したとみられる未成熟堅果数も、全ての個体で0であった。オキナワウラジロガシは、開花の翌年の秋に堅果を成熟させる性質(2年結実性)を持つ。従って、この結果は、この森林のオキナワウラジロガシ個体群では2006年の春に開花が起きなかったことを示唆している。

オキナワウラジロガシと同じアカガシ亜属に属する他の2年結実性カシ3種(アカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ)では、堅果を大量に生産する年とほとんど生産しない年を交互に繰り返す明瞭な隔年結果現象が知られている(第52回大会発表)。この隔年結果のリズムがオキナワウラジロガシにも存在するのかどうか、また、年次変動をもたらす要因が何であるかは、興味ある今後の調査課題である。

日本生態学会