| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-109
北タイ・インタノン山の標高1,700 m付近に分布する熱帯下部山地林において,ブナ科コナラ属のQuercus eumorpha Kurz(以下Qe)とQ. brevicalyx A. Camusの(以下Qb)2種は,ともに優占種として同所的に共存し,それぞれ高い現存量をもつ.これら2種の共存機構を明らかにするため,1999年から2000年にかけて,発芽前後の堅果・実生の生態的特性に着目して調査・実験を行った.堅果の発芽は,滅菌し食害を排除した実験環境下では2種とも70%以上の堅果が発芽したが,林内ではQbでは39%,Qeでは16%の堅果しか発芽できなかった.母樹の林冠下に設置したベルトトランセクトで種子・実生の追跡調査を行い,環境要因の影響を多項ロジスティック回帰分析で検定したところ,堅果期の生存にQeでは堅果密度,Qbでは堅果密度・母樹からの距離・林冠開度・リター厚がそれぞれ影響を与えていた.またQbの稚樹の生存には林冠開度が有意な影響を与えていた.相対照度を100%から3%まで段階的に調整した被陰格子では,実験開始後約1年後までの生長の最適照度はQbのほうがQeよりもやや高かった.刈り取った稚樹のアロメトリーをみると,Qbでは幹へのバイオマス配分が多かった.稚樹の密度はQbのほうがQeよりも高かったが,堅果・実生期の生存率の違いがその要因と考えられた.Qeは西側斜面の上部に集中的に分布しており,Qbはそれ以外の斜面中腹から下部にすみ分けていたが,このような空間分布の違いには稚樹期の光特性の以外の要因の影響も示唆された.