| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-111

ミミズは森林植物の成長を改変するか?

*日浦勉(北大・苫小牧研究林),鍋島絵里(農工大),豊田鮎(自然研),川口達也,金子信博(横国大)

はじめに

植物の成長や生産性は様々な要因によって変化する。土壌条件もその一つである。ミミズは土壌動物の中でバイオマスが大きく、土壌構造や物質循環過程を改変することで土壌中の栄養塩の利用可能性を変化させることが、草地や畑で明らかにされている。しかし森林生態系においてミミズが植物の成長や生産性に果たす役割はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では野外でミミズの密度を実験的に操作し、そこに生育する様々な生活史を持つ草本と木本植物の成長速度や光合成能を比較することで、森林生態系におけるミミズの役割を評価した。

方法

苫小牧研究林のミズナラが優占する二次林に、2003年に一辺が10mの三角形の実験区にミズナラ林冠木が3個体以上含まれるよう計12箇所つくり、ミミズ排除区、捕食者排除区、囲い対照区、開放対照区をそれぞれ3反復設置した。ミミズ排除区においてハンドソーティングで可能な限りミミズを除去した。ユキザサとオオアマドコロのバイオマスと光合成速度、ミズナラ実生の伸長成長と葉の炭素・窒素量、ミズナラ林冠木の直径成長と葉の炭素・窒素量を測定した。

結果と考察

ユキザサのバイオマスと光合成速度はミミズの密度が高いほど高くなったが、オオアマドコロではそのような傾向は見られなかった。ミズナラ実生ではミミズの密度が高いほど伸長成長が大きく、葉の窒素含量が高い傾向があった。ミズナラ林冠木では葉の窒素含量は有意な差がなかったが、直径成長はミミズ排除区で小さい傾向があった。

これらの効果の違いは、植物の生活史の違いによってもたらされ、相対的に栄養塩制限を受けやすい植物がミミズ密度の影響を受けるものと考えられる。従って様々な生活史を持つ植物が共存する森林生態系では、ミミズの果たす役割もより複雑なものとなるだろう。

日本生態学会