| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-112

ミズナラ林の発達段階に伴うミミズ類の分布と落葉分解の関係

*豊田鮎(自然環境研究センター), 荒木奈津子, 日浦勉(北大・苫小牧研究林)

ミミズ類は落葉と土壌の摂食を通して微生物の分解活性を高める。一方、長期的にみると土壌中に有機物を蓄積する効果も知られている。このように分解者群集の中で、ミミズ類は落葉変換者、土壌改変者としての2つの機能をもち、土壌有機物の動態に密接な関わりをもつ。したがって、植物からの有機物供給のみでなく、ミミズ類が密度依存的に土壌有機物を変化させるかもしれない。北海道苫小牧研究林は1739年の樽前山の噴火によって堆積した火山灰に覆われ、貧栄養な未熟土である。また表層性ミミズ類の密度が高く、ミミズ類の活動期には落葉が粉砕され土壌表層に糞団粒が形成される。そこで本研究では、1)植生回復の初期にミミズ類の侵入が可能か、林分の発達段階に伴うミミズ類の分布パタンを記述し、2)落葉、土壌→ミミズという土壌中の食物網においてミミズ類密度が土壌の分解活性を左右しているのかを明らかにすること、を目的とした。苫小牧研究林の発達段階が異なる落葉広葉樹林においてミミズ類の密度、落葉堆積量、土壌の炭素量および分解活性を測定した結果、ミミズ類は若齢林にも生息するが、ミミズ類密度は林分が発達するほど高くなった。土壌炭素量は発達した林分ほど多く、一方、落葉堆積量には違いがみられなかった。土壌の分解活性にも林分発達段階に依存した顕著な傾向がみられなかった。以上の結果から、若齢林でも落葉層は充分に発達し、ミミズ類は落葉粉砕者として密度に依存して土壌に有機物を供給すると考えられる。しかし、成熟林ほど有機物供給および土壌炭素量が多いにもかかわらず、土壌分解活性はミミズ類密度および林分発達段階に依存した増加傾向がなかった。すなわち、植生回復の比較的早期からミミズ類が生息することによって、長期間にわたる土壌炭素の蓄積にミミズ類の活動が貢献していると推測される。

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