| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-113
日本を含む東アジアにはフトミミズ科ミミズが、多くの森林で優占種となっていると考えられる。日本での土壌に対するミミズの影響についての研究はほとんど例がないが、ヨーロッパや北米で研究されてきたツリミミズ科ミミズ類同様、土壌動物の中で現存量が大きく、土壌中の有機物動態や土壌構造を変えることで土壌生態系の環境を改変し、他の土壌生物の挙動や植物の一次生産に影響を与える生態系機能をもつと考えられる。本研究では、ミミズのもつ土壌中の栄養塩、特に窒素の無機化機能が森林生態系の栄養塩循環に大きく影響を及ぼすと考えた。植物が利用しやすい硝酸態窒素はミミズが多いと増え、ミミズの除去を行うと、リターが堆積し,硝化が進行せず,窒素はアンモニア態で植物に利用されるという仮説をたて、ミミズ密度と土壌の窒素動態の関係性について検討した。
2003年4月に北海道大学苫小牧研究林のミズナラが優占する二次林に、一辺が10mの三角形の実験区を12箇所つくり、ミミズ排除区、捕食者排除区、囲い対照区、開放対照区を各3反復設置した。ミミズ排除区では、林床リターの攪乱を可能な限り少なくした上で、ミミズをみつけ次第排除した。土壌中のアンモニア態窒素、硝酸態窒素とリター堆積量を測定した。
ミミズ現存量が大きいほど、リターの堆積量が少なくなり,土壌団粒が増加した。また、リターの堆積量が少ないほど、土壌中の硝酸態窒素が多くなり,アンモニア態窒素が減少した。
本試験地では表層に生息し、リターを摂食するヒトツモンミミズが優占している。このミミズの摂食行動が、直接もしくは間接的にリターの分解を促進しているようだ。また,ミミズの摂食行動が起点となり、結果的に土壌中の硝酸態窒素濃度を高めていることが予想される。