| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-116
近年、農生態系の多様性が持つ機能が注目され、節足動物群集構造に重要な影響を及ぼすことが明らかとなっている。ここでは、混作が農生態系の節足動物群集へ及ぼす影響を明らかにするため、ダイズとトウモロコシをそれぞれ単作と混作で2年間栽培し、これら作物上の植食者と捕食者の相互作用の解明を試みた。アブラムシ個体数は栽培様式の影響を受け、トウモロコシ上では混作区で個体数多く、ダイズ上では単作区で個体数が多くなる傾向が見られた。一方、テントウムシなどのアブラムシ捕食者個体数はトウモロコシ上では混作区で個体数が多く、ダイズ上では単作区で個体数が多くなるなど数の反応が見られた。アブラムシ当たりの捕食者個体数は特に混作ダイズ上で多く、数の反応がより速やかに効いていた。これは混作区においてトウモロコシ上にいたテントウムシなどの移動性捕食者が、混作されているダイズに移動し、結果としてダイズ上のアブラムシ個体数を減少させたことに起因する天敵効果であると考えられた。混作トウモロコシ上でアブラムシ個体数が増加した理由については、混作による質の向上などが考えられた。
アザミウマ個体数、甲虫目、鱗翅目幼虫、バッタなどの咀嚼性植食者個体数については両作物上で栽培様式の影響をほとんど受けなかったが、カメムシ、ウンカ、ヨコバイなどの吸汁性植食者は栽培様式の影響を受け、混作ダイズ上で個体数が減少した。このような植食者の種によって、栽培様式の影響の有無が決定する理由として、影響があった種の発生個体数が多かったためであると考えられた。つまり、天敵効果を利用するには、捕食者を維持するための植食者個体数が必要であると考えられた。また、今回資源集中効果を検討するために栽植密度を変えて、同実験を試みたが顕著な影響が見られなかった。ここでは、以上のような調査結果などを含め農生態系の多様性が持つ機能について考察する。