| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-118
空間的異質性は生物の多様性に影響を与える重要な要因である。広域スケールで空間を考慮した場合、撹乱体制は景観内のそれぞれの群落タイプの割合をコントロールすることによって空間的異質性に影響を与える。よって、生物多様性の維持機構解明の一端として、空間的異質性と撹乱体制を理解することは重要である。
撹乱パッチの空間配置は撹乱の頻度を制御するため、空間的異質性に影響を与えると考えられる。例えば、それぞれの撹乱パッチが空間的に集中した場合、撹乱パッチが重なった部分は撹乱頻度が大きいため、景観内に単独の撹乱パッチでは生じない新たな群落のタイプが生じる可能性がある。よって、撹乱パッチの空間配置が分散した場合と比べて空間的異質性が増加すると考えられる。モンゴル草原の多くは広い面積にわたって限られたイネ科が優占する比較的均質な群落である。この中で、大型げっ歯類であるシベリアマーモットは土砂のかき出しを伴う造巣、草食や排泄物等の撹乱を介して、異質な景観を形成している。そこで、マーモットの巣穴が空間的に集中した場合、巣穴が分散した場合と比べて空間的異質性が大きくなるという仮説を立てた。
この仮説を検証するために、モンゴルにおいて、マーモットの巣穴分散区と巣穴集中区でそれぞれ50m×50mの調査区を設定した。それぞれの調査区は隣接した2m×2mのコドラート625個に区切られ、その中で群落調査を行なった。また、5m間隔で土壌のコアサンプルを採取した。得られた植物種構成のデータを用い、それぞれの調査区で異質度指数を求めた。また、土壌の栄養塩の値を求め、その値からそれぞれの調査区全体の空間内挿を行った。その得られた結果について報告する。