| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-120

種子を壊さずに成分を測る −近赤外分光法によるコナラ種子タンニン含有率の測定法−

*高橋明子(京大院・農), 河野澄夫(食品総合研究所), 島田卓哉(森林総研・東北)

コナラ種子は被食防御物質タンニンを含有している。その含有率には大きな種子間変異が存在するため、含有率の違いが種子の生存過程に影響する可能性がある。しかし、従来法では種子を破壊しなければ個々の種子の含有率は得られず、そうすれば生存過程の追跡は出来ないというジレンマがあった。本研究ではこのジレンマを克服するために、コナラ種子のタンニン含有率を近赤外分光法(NIRS)により非破壊的に測る方法を検討し、検量モデルを作成した。NIRSは,近赤外光の吸光度を用いて有機化合物における幅広い定量分析を非破壊的に行う手法であり、近年食品・農業・工業分野で広く実用化されている。

2006年秋に岩手県盛岡市、滝沢村にて回収した健全コナラ種子212個をサンプルとして用いた。分散型近赤外装置(NIRSystem社製、6500型)を用い、透過法によりスペクトルを測定した。種子のタンニン含有率はRadial Diffusion法により求めた。スペクトル解析には、The Unscrambler(Camo社製)を用い、2次微分スペクトル(850-1100nm)及びタンニン含有率を基にPLS回帰を行い、タンニン用検量モデルを作成した。検量モデルの評価はFull cross validation法によった。種子サイズの影響を軽減するため、検量モデルを三群に分けて作成した。

最大でR=0.91 (SEC=0.50%, SECV=0.84%, bias=0.03%)の結果が得られた。より高い精度のモデルを得るためには、サンプル数を増やし、タンニン含有率のレンジを広げる必要がある。今後このモデルを用いることで、成分既知の種子の生存過程の追跡が可能となるだろう。

日本生態学会