| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-121

森林性齧歯類におけるタンニン耐性の種間比較

*島田卓哉(森林総研・東北支所),田村典子(森林総研・多摩)

タンニンは被食防御作用を有する植物二次代謝物質であり,消費者に様々な負の影響をもたらす.タンニンは植物体に広く存在し,中でも堅果類(コナラ属樹木種子)はタンニンを高い含有率で含むことが知られている.したがって,堅果類を常食する植食者は,何らかのタンニンに対する防御機構を有しているものと考えられる.演者らは,アカネズミがタンニン結合性唾液タンパク質とタンナーゼ産生細菌の働きによって堅果中のタンニンを無害化し,堅果を利用していることを既に報告している(Shimada et al. 2006, J.Chem. Ecol.).アカネズミはこのような「タンニンに対する耐性」を有しているために,堅果の主要な捕食者/散布者となっているものと考えられるが,他の森林性齧歯類もアカネズミと同様のタンニン耐性を持っているのだろうか.タンニン耐性に違いが存在するならば,森林性齧歯類の採餌及び種子散布行動,そしてそれを通じて樹木の更新過程にも影響を及ぼすことが予測される.そこで,本研究では,森林性齧歯類3種[アカネズミ(アカ),ヒメネズミ(ヒメ),ニホンリス(リス)]及び草地性齧歯類1種[ハタネズミ(ハタ)]を対象として,タンニン結合性唾液タンパク質の活性(タンニンに対する唾液の結合能力として測定)とタンナーゼ産生細菌の保有量を明らかにし,タンニンに対する耐性の評価を行った.その結果,タンナーゼ産生細菌保有量は,ハタが他の3種よりも著しく低いことが判明したが,森林性齧歯類種間では違いが認められなかった.加水分解性タンニンに対する唾液の結合能力はアカ=ヒメ>リス>ハタであったが,縮合型タンニンに対してはヒメ>アカ=リス>>ハタであることが判明した.これらの結果は,食性からの予測とは部分的に一致しなかった.本講演では,これらの結果から,食物選択におけるタンニン耐性の意義について考察する.

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