| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-122

岡山県で記録されたモウセンゴケトリバは他地域からの移入種か?

*片岡博行(津黒いきものふれあいの里),西本孝(岡山県自然保護センター)

モウセンゴケトリバ Buckleria paludum (Zeller) は,食虫植物であるモウセンゴケ類を食草とする小型のトリバガである.岡山県では1983年に瀬戸内海の島において採集記録が1件あるのみで,その県内における分布あるいは生態についてはほとんど不明であった.近年岡山県南部の複数の湿地に外来食虫植物が侵入していることが明らかとなり(片岡・西本,2004,2005),その調査の際に本種の幼虫が確認された.しかしながら,いずれも外来食虫植物の生育する湿地で確認され,外来モウセンゴケの摂食も観察されたことから本種が在来種ではなく,外来食虫植物とともに他地域から持ち込まれた移入種である可能性が考えられた.このため在来種なのか移入種であるのかを判断するため,その生態と岡山県における分布について調査を行った.

本種幼虫によるモウセンゴケ類果実の摂食痕数を定期的に調査した結果,摂食のピークは在来種であるトウカイコモウセンゴケ D. tokaiensis の花期にあったこと,外来種の侵入していない湿地においても幼虫が確認できたことから,本種は岡山県の湿地に元々生息していた在来種であることが確認された.

また今回の調査により,これまでモウセンゴケ類の葉を食するとされていた本種幼虫が,モウセンゴケ類の果実,厳密には未熟種子を好んで摂食していることが明らかとなったほか,在来種に比べ花期の長い外来種ナガエモウセンゴケ D. intermedia の侵入によって本種の出現パターンが変化しつつある可能性が示唆された.さらに,岡山県ではモウセンゴケ D. rotundifolia のみが生育する内陸部の湿地では確認されておらず,沿岸部の湧水湿地に生育するトウカイコモウセンゴケに依存している可能性が高いことも明らかとなった.

日本生態学会