| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-124

植食者2種に対するアカメガシワの食害防御機構

山尾 僚(岡山理大・院・総情・生地),波田 善夫(岡山理大・総情・生地)

アカメガシワの葉には植食者に対する防御機構として、花外蜜腺・腺点・星状毛の3つの構造がある。花外蜜腺はアリなどの捕食者を誘引することで植食者を排除させる間接防御の機能をもち、腺点と星状毛は、化学的あるいは物理的に植食者の食害を減らす直接防衛の機能をもつ。本研究では、単食性のサメハダツブノミハムシと広食性のヨモギエダシャクという異なるタイプの植食者に対するアカメガシワの防御形質の効果を野外調査と野外および室内の実験により検証した。

まず、野外で自生しているアカメガシワの葉を調べ、花外蜜腺によって誘引されたアリの数を記録した後、顕微鏡下で腺点数と星状毛数およびハムシとエダシャクによる食害面積を記録した。その結果、アリ数が多い葉ほどエダシャクによる食害は少なく、腺点数や星状毛数が多い葉ほどハムシによる食害は少なかった。次に、花外蜜腺のアリによる被食防御効果を検証するために、野外でアリを排除したシュートとしていないシュートの食害面積を比較した。その結果、エダシャクによる食害はアリを排除したシュートで増加したが、ハムシによる食害はアリ除去によって影響されなかった。最後に、腺点と星状毛の食害防御効果を明らかにするために、腺点と星状毛を一部取り除いた葉をエダシャクとハムシに与え、食害面積を測定した。腺点と星状毛を少なくするとエダシャクによる食害は影響されなかったが、ハムシによる食害は有意に増加した。

このようにアカメガシワの花外蜜腺による間接防御は、エダシャクに対して防衛効果をもち、腺点や星状毛といった直接防御はハムシに対して防衛効果をもつことが明らかになった。以上の結果は、アカメガシワは多様な植食者に対して効果の異なる複数の防御形質を発現させることで、相補的な防御機構を発達させてきたことを示唆している。

日本生態学会