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一般講演(ポスター発表) P3-126
ミズナラなどの堅果は森林性野ネズミの重要な食物資源であるが、被食防御物質であるタンニンを多量に含んでいる。タンニンの過剰な摂取は、消化管の損傷などの有害な影響を消費者に及ぼすことが知られている。これまでの実験室内の研究で、アカネズミがタンニン結合性唾液タンパク質とタンナーゼ産生腸内細菌の働きによってタンニンに馴化し、負の影響を軽減していることが分かってきた。このうち、タンナーゼ産生細菌は、タンニンとタンパク質の複合体を再利用可能な形に分解する役割を持つと考えられている。本研究では、野生下の野ネズミにおけるタンナーゼ産生細菌の保有量とタンナーゼ活性の季節変動を追うことによって、野生下でのタンニンに対する馴化機構を明らかにすることを目的とする.
北海道大学雨龍研究林にて捕獲したアカネズミ、ヒメネズミ、エゾヤチネズミの新鮮糞便から、タンニン処理したBHI培地を用いてタンナーゼ産生細菌を分離した。タンナーゼ産生細菌保有量(糞便1gあたりの出現コロニー数;CFU)及びタンナーゼ活性を測定し、それぞれの季節変動を調べた。
アカネズミにおいては,連鎖球菌タイプのタンナーゼ産生細菌(TPS)のCFU及び活性は堅果落下時期に増加していた。一方、乳酸菌タイプ(TPL)のCFUは季節を通して変動せず、活性はTPSと同様に堅果落下時期に最も高い値を示した。ヒメネズミとエゾヤチネズミでは、アカネズミに比べCFU及び活性に顕著な季節変動が見られなかった。これらの結果と自動撮影による野ネズミのミズナラの堅果利用度の調査結果によって、アカネズミはミズナラ堅果への依存度が他の2種の野ネズミより高く、堅果落下時期にタンナーゼ産生細菌によるタンニンへの馴化が進むことが明らかになった。