| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-127
東南アジア熱帯雨林に生育するアリ植物オオバギ(Macaranga属)は,幹内の空洞に絶対共生者であるシリアゲアリ(Crematogaster属)を住まわせている.オオバギもアリも共に依存し合い,独立しては生きてゆけない.さらに幹空洞内でアリはカイガラムシ(Coccus属)を飼育している.オオバギから分泌された栄養体,加えてカイガラムシが排出する甘露をアリは栄養源として利用し,完全な樹上生活を営む.それらの見返りとして,オオバギは植食者や絡みついてくるツル植物からアリに守られ,カイガラムシはアリの巣に入ることで天敵から逃れられる.
オオバギと共生アリの間にはこのような密接な関係があるため,先行研究では共種分化の可能性が検証されてきた.共種分化を検証するときに重要なのが,アリとオオバギが一種対一種で関係を持つという種特異性である.つまり種特異性の強弱を決める要因を理解することは共種分化を理解することにつながる.東南アジア広域のサンプリングから,アリがオオバギの幹形質を区別して大まかな分類群特異的な関係を持っていることが分かった.しかしアリがオオバギを選ぶのではなく,逆にオオバギが幹形質やその他の要因で,引きつけるアリを限定しているということも考えられる.
そこで本研究では手始めにボルネオ島ランビル国立公園という狭域に絞って,アリとオオバギを採集し,植物側から見た種特異性を調べた.その結果,ある植物群では限られたアリだけを住まわせているのに対し,別の植物群では複数種のアリを住まわせていた.これら単一のアリを住まわせる植物群と,そうでないものの間にどのような違いが見られるかを幹形質,環境などの諸要因について考察する.