| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-134
陸上における動物と植物の相互作用は、捕食被食関係であれ受粉媒介であれ、化学物質や形態をめぐる種特異性の高い関係になりがちである。一方、海洋においては、植物を棲み場所として利用する動物が多く、ホンダワラ属の褐藻が形成するガラモ場は沿岸域における重要なハビタットである。大型藻類の藻体上で生活する小型動物を葉上動物と呼ぶが、ホンダワラ属には多くの種類があることから、ハビタットの空間構造は藻類種によって異なる可能性がある。そこで、藻類種による葉上動物相の違いについて調査を行った。
調査は、九州西岸の津屋崎町鼓島で2001年4月に行った。SCUBA潜水を用いて、藻体全体にプランクトンネット付きビニール袋又はビニール袋を被せ、藻体ごと葉上動物を採集した。10%海水ホルマリンで固定し、葉上動物を分離した後研究室に持ち帰り、種別個体数を計測した。
その結果、13種の藻類(ホンダワラ属以外の褐藻も含む)から、少なくとも8動物門、約130種の葉上動物が採集された。大型藻類の種間で葉上動物の種数を比べたところ、50種以上の動物が見られた藻類種と、10種以下しか採集されない種があった。動物分類群ごとの分布の特徴を見ると、ヨコエビ類やワレカラ類の小型甲殻類ではどの藻類上でも見られる共通種が多いのに対して、腹足類、多毛類は特定の種でしか見られないものが多かった。前者は、藻類種による種組成の違いは少ないが現存量の違いは大きく、しかも種数の多寡とは一致していない。腹足類や小型甲殻類、特にワレカラ類は、大型藻類の上に付着する小型藻類を摂食するとともに、藻体につかまったり隙間に入り込んだりして生活しているため、空間構造によって棲み場所とする藻類種を選択している可能性がある。