| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-136
藻類の化学量比は、同種でも光条件や栄養塩供給量により大きく変化するが、動物プランクトン等の藻食者では、化学量比は種間では異なるものの、種内ではさほど大きく変化しない。このため、餌となる藻類と動物プランクトンの間では化学量比は異なる事が多く、特に湖沼では藻類に含まれるリン含量が動物プランクトンの成長速度を制限し種組成に影響を及ぼすことが知られている。しかし、餌量が少なく成長速度が低い場合には、代謝に必要なエネルギー(炭素源)が相対的に多く必要になるため、餌のリン含量にかかわらず、単位体重あたりの炭素代謝速度の低い体サイズの大きい種ほど生存に必要な炭素レベルでの閾値餌量(Threshold Food Concentration、TFC)は低くなると考えられている。このことは、餌量の少ない貧栄養環境下では、餌のリン含量にかかわりなく、体サイズの大きい種が有利となることを意味している。そこで本研究では体サイズの異なる8種のミジンコを対象に、リン含量の異なる餌を様々な密度で与えて飼育し、生存に必要な閾値餌量を測定した。その結果、餌のP含量によってTFCが変化すること、その変化幅は種によって大きく異なること、その変化幅の種間差は出生・成熟サイズや最大成長速度とは無関係であることが明らかになった。このことは、餌量の少ない貧栄養環境下では必ずしも体サイズの大きい種は有利とはいえないこと、そのような環境でも餌のリン含量が種組成に影響を及ぼすこと、さらにリン欠乏に対する耐性の種間差は、炭素代謝速度よりもむしろリン獲得能力やリン貯蔵能力に依存していることを示唆している。