| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-139

アマゾントチカガミ(Limnobium laevigatum)の成長量に根の部分切除が及ぼす影響の定量的評価

鈴木観(首都大・理工)

水、栄養塩吸収を担う根は、被食等のため損傷・切除をしばしば受けるが、新たな形成もされやすいと言われている。そこで本研究では、「根の切除が成長に及ぼす影響は、根の回転率が早いため限定的である」という仮説の下、根を実験的に切除し、個体成長の変化を定量的に評価した。

根の切除操作が容易な、浮遊性水生植物アマゾントチカガミを用いた栽培実験を行い、親ラメットの成長量、形成された娘ラメット数・乾重量に対する根の切除率の効果を1要因分散分析法により解析した。人工気象室内に配置した100mlの容器でアマゾントチカガミを11日間栽培し、6段階の切除率で根を切除した。切除処理後15日目に刈り取り、地上部と根を乾燥させ秤量した。実測した乾燥重量と根切除時の推定乾重量との差を成長量とした。

親ラメットの成長量に対する切除の効果は有意だったが、切除を行わなかった対照との間で有意差が見られたのは、切除率の高い場合にかぎられ、対照以外の条件間では有意差は見られなかった。娘ラメット数・乾重量において切除の効果は有意だったが、対照との間に有意差が見られたのは切除率が90%以上の場合のみであり、対照以外の条件間の比較では、75%以下の切除率の処理と90%以上の処理の間で有意差が認められた。

親ラメットの成長量に切除が効果を及ぼすのは、切除率がかなり高い場合に限られる可能性が高い。これは、切除を受けやすい根が、高い回復力を有し、根量が減少した場合でも栄養塩吸収能力が維持されるためだと考えられる。一方で、根の切除の割合が大きいと娘ラメットの生産量は減少したが、根の切除の影響は限定的であった。以上より、根の量的損失は、生理活性の向上など質的に補償される可能性が高い。

日本生態学会