| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-151
倍数化・交雑を介した種形成は植物では一般的に見られる現象であり、ゲノム構成の変化がもたらす植物の生活史に対する影響を明らかにすることは植物の進化を理解する上で重要である。特に異なるニッチを持つ種間どうしの交配によって生じた雑種は、両親種の性質を受け継いでニッチが拡大する可能性がある。アブラナ科タネツケバナ属は200種以上からなり、その多くが異質倍数体である。さらに本属では、二倍体種が乾燥地、もしくは湿地という対照的な環境に生育しているのに対し、両者が交雑することによって生じた異質倍数体はより多様な環境に生育している。そのため、本属では異質倍数化と生育環境の拡大が連動した結果、多様性が生み出されている可能性がある。
本研究では、まず異質倍数体のゲノム構成を判別するための分子マーカーの作成を行った。二倍体間で配列長に変異があるような単一コピー遺伝子を探索し、アガロース電気泳動で異なる位置にバンドが出るようなものを候補とした。さらに、葉緑体DNAを用いたPCR-RFLPによる異質倍数体の母親種の同定も行った。本発表では、タネツケバナ属の異質倍数体が判定できるのかどうかを検討した結果を報告する。また、生育環境の決定に重要な種子、実生の乾燥・沈水耐性について、二倍体・異質四倍体間の比較を行い、異質倍数体の生育可能な環境の幅が拡大しているかを検討した。異なる水分条件下に置き、生存率を比較した。湿地性二倍体では土壌面が常に沈水するような環境に生育するので、生存率が乾燥条件下で低く、沈水条件下では高いと予測した。また、乾燥地性二倍体では乾燥にさらされる環境に生育することから、生存率が乾燥条件下で高く、沈水条件下で低くなると予測した。さらに、異質四倍体では両方の条件下で生存率が高くなると予測した。本発表では、これらの予測を検証した結果を報告する。