| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-155

選択に対する応答性に遺伝的背景が与える影響:遺伝子制御ネットワークモデルによる解析

津田真樹*, 河田雅圭 (東北大・院・生命科学)

表現型を作り出す遺伝的背景は、表現型のバリエーションが生じる程度や方向性に偏りを生じさせることで、遺伝的浮動や自然選択の下での表現型進化の速度や方向性に影響を与え得る。このことは近縁種間の形質の多様性パターンや長期間変化しない形質を説明する仮説の一つとして重視されてきた。

近年、実験研究により他の多くの遺伝子から発現の影響を受ける遺伝子は遺伝的浮動により発現量が進化しやすいことや、理論研究により表現型に影響する遺伝子座間のエピスタシスの方向性は表現型の方向性選択に対する応答性に影響を与えることが示され、遺伝的背景は表現型進化に影響を与えることが明らかとなりつつある。しかし、一般的には表現型を生み出す現実的な分子的メカニズムの働きにより、どのような進化の速度の違いや方向的偏りが生じるのかということはほとんど理解されていない。

そこで本研究では、分子的メカニズムの働きを通して遺伝的背景が方向性選択に対する応答性にどのような影響を与えるのか解析することを目的とする。そのために酵素のような表現型を司る遺伝子の発現量が転写を調節する制御遺伝子との間の遺伝子制御ネットワークにより決定されるようなモデルを用いて、ネットワークを構成する遺伝子数、制御相互作用数、構造(トポロジー)などの違いにより、様々な方向への方向性選択に対する応答性のパターンにどのような違いが生じるのか解析する。

日本生態学会