| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-160

エピジェネシスの種内変異と一般性

中寺由美,浅見崇比呂(信州大・理),Somsak Panha, Chirasak Sutcharit (Chulalongkorn Univ.)

多くの動物で内臓の形や配置は左右非対称である。内臓の左右極性が示す一次左右性は、突然変異で問題なく左右反転することがわかっている。ところが、動物の鏡像体は一般に進化していない。対照的に巻貝では、一次左右性の反転により左巻や右巻の種がくり返し進化した。だが、左巻種は右巻種より圧倒的に少ない。なぜだろうか?先行研究により、ゲノムが同じでも左右逆に発生するだけで生存率が下がり、殻の形が変わることがわかった。これは、発生の左右極性それ自体が以降の形態形成を変更する発生拘束(エピジェネシス)を証明している。さらに、東南アジアの樹上性カタツムリAmphidromus属では、動物界では例外的に発生の右型と左型が同一集団に共存し、核ゲノムを共有していることがわかった。はたして野生集団に共存する、遺伝的に異ならない右巻と左巻では、殻の形にエピジェネシスが生じているのだろうか。幾何形態学的手法を用い、互いに独立に進化した三科の左右二型種群を調べた結果、ほぼすべての集団で右巻と左巻の形が異なっていた。この結果は、左右逆の発生がもたらすエピジェネシスの一般性を支持する。

日本生態学会