| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-163

左右反転変異の鏡像対称ではない発生が適応度を下げる

*後藤今日子,浅見崇比呂(信大・理・生物)

動物界では一般的に内臓の左右が反転した鏡像体は見つからない。しかし、巻貝ではその鏡像体が繰り返し進化した。

有肺類の右巻と左巻は、単一遺伝子の母性効果により決定される。そのため、右巻遺伝子のホモ接合体と左巻遺伝子のホモ接合体が正逆交配すれば、同一両親のゲノムを共有する右巻と左巻が得られる。この手法で作成したタケノコモノアラガイの左右二型を比較すると、遺伝的に異ならないにもかかわらず、左巻の孵化率が低く、成熟個体の殻は鏡像対称ではなかった。

有肺類の左巻と右巻は、螺旋卵割の最初から左右逆に発生する。そこで、本研究では、遺伝的に等しい右巻と左巻の初期発生が鏡像対称か否かを調べた。8細胞期に大割球と小割球がずれて回転する角度(螺旋度)を測定した結果、左巻は右巻より螺旋度が小さかった。しかも、左巻では螺旋度が大きいほど孵化率が高く、右巻では両者は相関していなかった。

以上の結果から、左巻を産む遺伝子型に対する純化淘汰が、螺旋卵割の左右極性がもたらすエピジェネシスにより生じることがあきらかである。

日本生態学会