| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-166

オカダトカゲの色彩パタンの地理的変異−色素細胞の発生学的研究

*栗山武夫(東邦大・理・生物),宮地和幸(東邦大・理・生物),杉本雅純(東邦大・理・生物分子),長谷川雅美(東邦大・理・生物)

伊豆諸島に生息するオカダトカゲ(Plestiodon latiscutatus)の幼体は、島ごとに胴体部の明瞭なストライプと青い尾から、不明瞭なストライプと先端のみ青い尾といった体色に地理的変異が見られる。この地理的変異がどのようなメカニズム・発生過程により生じたかを解明するために、体色をつくり出す色素細胞に注目して、以下の2点を明らかにした。

1.ストライプと青い尾を構成する色素細胞の種類と微細構造

2.胚発生時における色素細胞よる色彩形成過程

オカダトカゲの幼体から3種類の色素細胞(黄・虹・黒色素胞)が確認され、各体色における色素細胞の種類構成は異なっていた。ストライプを構成する黄白色は3種類の、黒色は黒色素胞のみが確認できた。尾部の青色は虹・黒色素胞の2種類であったが、虹色素胞内の反射小板の厚さが胴体のものよりも薄いことがわかった。次に、胚発生時のストライプ形成過程を観察したところ、黒色素胞は他の色素細胞より早期に出現し、その分布様式に凹凸加減があるほど明瞭なストライプを形成することが示唆された。また、尾部の青色部分の長さは茶色と青色の境界のずれ、つまり黄色素胞の有無と虹色素胞内の反射小板の厚さの違いが原因であると考えられた。胚発生では、反射小板の薄い虹色素胞が局所的な出現を示し、この位置が孵化時の茶色と青色の境界とほぼ一致した。このことから、はじめに出現する虹色素胞が尾部における色の境界を決定していることが示唆された。

日本生態学会