| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-168

アミメアリにおける複数レベル選択の実験的検証

*土畑重人(東大院総合文化),佐々木智基(琉大農),嶋田正和(東大院総合文化),辻和希(琉大農)

潜在的な利己的戦略のもとでの社会的共同の進化は,近年の進化生物学において主要な問題のひとつである.単為生殖を行う社会性昆虫の一種アミメアリPristomyrmex punctatusは女王を持たず,コロニー内の全個体が労働と繁殖との双方を担う共同繁殖を行っているが,通常個体より大型の利己的社会寄生系統が一部の地域集団から知られている.利己系統は発達した卵巣を持つが,労働を行わないため,個体レベル淘汰(利己個体の形質に正の方向性選択がかかる)とコロニーレベル淘汰(利己個体を含むコロニーの形質に負の方向性選択がかかる)が正反対の方向を持つ,典型的な複数レベル淘汰の状況が期待される.今回われわれは,利己系統の頻度を操作したコロニーを用いて次世代を生産させる飼育実験を行い,実際に複数レベル淘汰が作用していることを示した.発表では,共同社会における利己戦略の進化動態を記述するいくつかのモデルとの関係についても触れる予定である.

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