| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-177

沖縄やんばるにおける育成天然林施業がトビムシ群集に与える影響

*長谷川元洋(森林総研木曽), 佐々木健志(琉球大学風樹館), 佐藤大樹(森林総研九州), 阿部真(森林総研)

土壌動物は軽微な環境変動にも比較的鋭敏に反応するため、環境指標性が高いことが知られている。このうちトビムシ、ササラダニなどに代表される小型土壌節足動物は、種数・個体数が多いために少量での調査が可能であるという利点を持つ。沖縄やんばる地域における育成天然林施業とは利用度の高い樹木の成長を促進する目的で、森林において中層および下層の植生を伐採、下刈りする施業であるが、その生物多様性に与える影響が懸念されている。沖縄やんばる地域において、育成天然林施業がササラダニ群集に対して、種多様性および、固有種の減少を及ぼすことが示唆されているが、トビムシ群集に与える影響については報告されていない。この研究では育成天然林施業がトビムシに及ぼす影響を評価するために、モデルとなる森林での施業後のトビムシ群集の経時変化を追跡するとともに、施業後の経過年数の異なる林分および未施業林(合計18林分)から試料の採集を行い、施業の有無や植生構造とトビムシ群集構造の関係を考察した。モデルとした林分では本数割合にして上層木で30%、中層木で70%程度の伐採を行っていた。

トビムシは土壌コアを用いて、リター層と土壌層を採取し、ツルグレン装置を用いて抽出した。各林分、各調査機会において、20mX10mのプロットから10個づつサンプルを採取した。経時変化の調査では施業前、施業直後、半年後、一年後の採集を行った。また、施業後の経過年数の異なる林分および未施業林の調査では冬と初夏の2回のサンプリングを行った。経時変化を追跡した調査でトビムシ群集を比較したところ、1年目まではトビムシの個体数および種数にそれほど大きな変動は観察されなかった。経過年数の異なる林分および未施業林からのデータもあわせて報告する。

日本生態学会