| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-181
生物多様性の減少は今や大きな地球環境問題、国際問題の一つである。しかし、地球温暖化や森林破壊などの環境問題と比べると、生物多様性の減少に対する一般市民の危機感はさほど高くない。近年は大学でも生物多様性に関する講義が増えているが、学生の理解度も必ずしも高いとはいえない。生物多様性問題は生態学の枠内では論じることのできない問題を多く含んでいるため、総合的なものの見方が必要とされるが、それをサポートできる教材はまだまだ少ない。
地球研プロジェクト「持続的森林利用オプションの評価と将来像」では、研究成果を学術社会だけではなくより広い社会に発信するために、生物多様性をテーマとした学部生対象の教材を作成してきた。 「大学講義のためのプレゼン教材 生物多様性の未来に向けて」と題されたこの教材は、教科書ではなく大学教官が授業で用いることを想定したMicrosoft PowerPointのプレゼンテーションのシリーズであり、本大会で初売りされる予定である。
プロジェクトで教材を開発したことによる利点は2点ある。1つ目は、生物多様性の問題を生態学、経済学、民俗学、社会学とさまざまな側面から総合的に扱うことができた点である。本プロジェクトメンバーの専門分野は生態学だけではなく環境経済や社会制度、民族博物学と幅広く、それを反映する形で教材を作成することができたためである。2つ目は、プロジェクト成果に基づいた最新の情報を内容に盛り込むことができた点である。生物多様性をめぐる情勢は刻一刻と変わるため、常に新しい情報が求められるが、研究に携わるプロジェクト自体が教材を作成すれば、研究成果を直に教材に反映させることができる。この教材も、研究成果に基づいて5年後にはリニューアルを予定している。
今回の発表では構想から完成までの方法論や作成の中で見えてきた課題とともに、教材の完成版を紹介したい。