| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-182

山梨県上ノ原地区の半自然草原における植生とチョウ類群集の関係

*久保満佐子(山梨森林研),小林隆人(宇大),北原正彦(山梨環境研),林敦子(山梨森林研)

山梨県富士山西北麓にある半自然草原において,異なる人為的管理によって植物の群集構造やチョウ類(成虫)および吸蜜源となる訪花の群集構造がどのように異なるのかを明らかにした。

調査を行った半自然草原はススキやトダシバが優占し,ところどころにクロツバラの低木疎林がある。本調査地には5つの異なる環境があり,秋に草刈をして草を持ち出している防火帯(以下,防火帯),秋に草刈のみを行う場所(草刈),秋に草刈のみを行う未舗装道路脇(未舗装道路),管理を行っていない放棄地(放棄草原),クロツバラの低木疎林(低木林)がある。以上の5つの環境で,植生とチョウおよび訪花の種類と数を調べた。

本調査地では,管理の違いによって半自然草原の植生に違いが確認された。低木林の林床はイネ科草本が優占するものの,ヤマハギやアキノキリンソウなどが少なく,他の調査地とは異なっていた。未舗装道路はトダシバが少なく,防火帯はヘビノネゴザやスイカズラが少ないのが特徴的であった。訪花数も管理の違いによって異なり,低木林ではクルマバナやイヌゴマが多く,草刈と未舗装道路,放棄草原は類似していたが,これらと防火帯は異なった。防火帯ではニガナが多く,ワレモコウやアキノタムラソウなどが少ないのが特徴的であった。

さらに,チョウ類の群集構造は防火帯と他の調査地で異なっていた。また,チョウの個体数は訪花種数や草本種数と正の相関があり,木本種数と負の相関があった。チョウの種数は訪花種数および訪花数と正の相関があった。

管理放棄後の年数や管理方法による春の植物群落高の違いによって,植生や訪花数が異なると考えられ,これにより,チョウ類群集が異なるものと考えられた。

日本生態学会