| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-183
近年,生物多様性と生態系機能との関係を調べた研究が増加してきており(金子, 2007),植物多様性の変化が土壌動物にも影響を与えていると考えられている(長谷川, 2004).しかし,それらの研究はリターの重量減少速度などに焦点をおいたものばかりで土壌動物が示す反応を考慮していないものが多い.土壌動物の反応を含んだ研究でも大きな分類群全体を捉えて計測をしているものが多く ,種レベルでの反応の違いを含むものは稀である.
そこで本研究では他樹種の侵入の程度が異なるいくつかのカラマツ人工林においてカラマツの胸高断面積割合(RBA)の違いが土壌中のササラダニ群集にどのような変化を与えているかを調査した.
調査は八ヶ岳のカラマツ人工林で行い,カラマツRBAが異なる計 8箇所にプロットを設置した.ササラダニは125ccコアを用いて,リター層と土壌層とに分けて採取,試料は当日中にマクファーデン装置にかけ,1週間抽出した.その後,標本作成と種レベルでの同定を行い,ササラダニの群集構造を解析した.
全プロットにおいて,49科60属89種,成虫24,368頭,幼弱虫10,522頭が採取された.カラマツRBAによるササラダニ群集への違いは有意に認められなかった.落葉由来のリターに注目して解析した結果,ササラダニ群集は針葉樹,広葉樹といったリターの違いには相関がなく,量に有意に相関がみられた.しかし,高頻度種と優占種に注目すると,カラマツリターに正に相関があった種,負に相関があった種がいた.また,これらの種がササラダニの群集組成全体に大きな影響を与えていることが示唆された.以上より,種レベルでの解析も必要であると考えられる.