| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-187

マテバシイの野生化

*中島亜利(横浜国立大学大学院),小池文人(横浜国立大学大学院)

日本においても植栽された外来樹木が野生化する現象が報告されるようになってきた.マテバシイLithocarpus edulisは九州南部以南を自生地とするブナ科の常緑樹であり,薪炭林として,北九州,房総半島,三浦半島などの自生地以外の地域にも広範囲に植栽されてきた.マテバシイ林の拡大と定着や,林床植生の多様性の低下が懸念されている.そこで本研究では,マテバシイが侵略的な国内外来種となりうるか明らかにすることを目的とした.

三浦半島の管理放棄された二次林やマテバシイ薪炭林などを含む緑地内で,(1)マテバシイの稚樹の分布状況から種子散布距離を調べ,自然な分布拡大が起こるのかを明らかにした.次に,(2) マテバシイ薪炭林の周辺に散在する個体のサイズと樹齢,およびマテバシイ稚樹の当年枝伸長量から,散布先の森林内で繁殖を行う成木にまで成長できるかを明らかにした.そして,(3)植生調査と毎木調査からマテバシイの存在によって,他の植物の多様性が低下しているのかを調べた.

マテバシイは母樹の樹冠の大きさを超えて,マテバシイ林外にも種子が散布されている.株立ちして密集するマテバシイ薪炭林の外の二次林においても,樹齢とサイズの関係は薪炭林内部との違いが見られず,またマテバシイ稚樹の当年枝伸長量はマテバシイ林外でより大きいことから,マテバシイ林外の二次林でもマテバシイは成木まで成長していくことが考えられた.マテバシイの優占度が大きくなるにつれて林床の出現種数が減少する傾向が見られ,マテバシイの存在が植物の多様性を低下させると考えられた.これらの結果から,マテバシイは侵略的国内外来種になる可能性が示唆された.

日本生態学会