| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-199

ため池の連結は水生植物の出現を変化させる? -浮葉植物と沈水植物の比較

*赤坂宗光(国環研), 高村典子(国環研)

局所群集の多様性は,局所プロセス(物理環境,競争など)と地域プロセス(個体の分散)の影響を受ける.本研究は山間部に存在する,連なる数の異なる重ね池(谷をせき止め作られた池で,階段状に連なり,池間に一方向の水の流れがある)を用い,局所プロセスと地域プロセスの相対的な重要性が水生植物の生活形(沈水・浮葉)によって,異なるかを調べた.局所プロセスとしては,水生植物の種多様性と強い関連のある,池の水の物理化学特性に注目した.地域プロセスとしては,水流に伴う散布体の分散を想定し,ため池の連結に注目した.

調査は,兵庫県東播磨地方において連結する数の異なる31の重ね池の連なり(池群)に属する59個のため池で行い,水生植物(沈水・浮葉)の出現と水の物理化学特性を調べた.

観察された水生植物のうち9種が浮葉植物,14種が沈水植物であったが,平均出現種数は浮葉植物(2.24種)のほうが沈水植物(1.39種)よりも多かった.水の物理化学特性は,池群による違いがみられなかった.浮葉植物の出現種数は池群の連結数大きく,次いで 水の物理化学特性に影響された.一方,沈水植物の出現種数は,池群の連結数よりも水の物理化学特性に大きく影響されていた.個々の水生植物の出現も,浮葉植物では上流の池に同種の生育しているかどうかが,水の物理化学特性よりも大きく影響していた.沈水植物では,水の物理化学特性の影響の方が大きかった.以上から,ため池の連結は水生植物の種多様性に影響を与えるが,その程度は,生活形によって異なることが示された.

日本生態学会