| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-203

東南アジア熱帯雨林における多孔菌類の群集構造

*山下聡(地球研),服部力(森林総研),中静透(東北大)

現在,東南アジアの原生林は急速に減少しており,生物多様性の保全の点から大きな問題となっている。菌類は地球上に150万種が生息していると推定されており,熱帯に多くの種が分布していると考えられているものの,研究例は極めて少ない。本研究では,低地フタバガキ林において,多孔菌類(Polyporales,Hymenochaetalesなど)の群集構造を明らかにすることを目的とした.

調査はマレーシア国サラワク州東部に位置するランビルヒルズ国立公園において,2006年5-6月と12月に行った.公園内に100 m×10mのトランセクトを12本設置し,さらにトランセクトを40個の5x5mコドラートに分割した.地上や大型植物遺体(CWD)から発生していた全ての多孔菌類の子実体を採集し,子実体が発生していた部位の材直径と腐朽段階を記録した.菌類の個体の定義として,倒木上に子実体が発生する種については,子実体が発生していた倒木の本数を子実体の個数によらず個体数として扱い,地上性の種については5x5mコドラートの個数を個体数とみなした。採集された子実体は種または形態種まで同定した.

調査期間を通じて108種688個体を採集した。Microporus xanthopus,Flabellophora licmophora,Amauroderma subrugosum,Microporus affinis,Ganoderma australeなど計13種が優占的に認められた一方(10個体以上),半数近くの種が一度しか出現しなかった。種数を推定したところ,1.2haあたり150種程度で生息しているものと考えられた。優占13種についてみると,直径の太いCWD(樹幹など)を利用する種類と細いCWD(枝など)を利用する種が認められた。

今後,種多様性のパターンに関する解析を加えて考察を行う。

日本生態学会