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一般講演(ポスター発表) P3-204
変形菌は,一般に枯死木や落葉などの腐植で生活する微生物で,基物の腐朽状態と関係して発生するといわれる.しかし,腐朽の進行にともなった変形菌群集の種組成や発生量の消長は研究されていない.本研究ではアカマツ枯死木に発生する変形菌群集の経年的な調査から,腐朽の進行と変形菌群集との関係を調べることを目的とした.
調査地は岡山県新見市草間(標高446m)にある二次林で,その林床(面積約0.25ha)にある枯死したアカマツの約100本の倒木(直径10cm以上)を調査木とした.調査は,変形菌の発生量が多い梅雨前から梅雨明け後と秋雨後の年3回とし,2000年から2007年の8年間継続した.変形菌の子実体コロニーを目視とルーペで探索し,種名は顕微鏡観察により同定した.1回の調査で子実体コロニーの100個以上を探索し,各種の発生頻度とコロニー面積および材の硬さを計測した.
調査全体で2792個のコロニーを観察し,17属51種を確認した.ムラサキホコリ目が15種で,コホコリ目14種,ケホコリ目11種などであった.各種の8年間の消長を相対優占度で比較した.衰退傾向の種は,マメホコリ・アオモジホコリ・キカミモジホコリの3種で,増加傾向の種はルリホコリとコムラサキホコリの2種であった.調査開始時の材の硬さは平均24.6±7.6 mm 貫入深であったが,8年後には12.6 ±7.6mm貫入深まで軟らかくなった.各年の種構成をもとにしたDCA解析では,各年の群集が第一軸に対して序列化(固有値0.325)され,その第一軸の値と材の硬さとは高い相関(r=0.965,p<0.01)を示した.
以上のことから,変形菌群集を定点において定量的に調査する方法により,変形菌群集の種構成が腐朽の進行にともなって変動し,特定の腐朽段階で優占する種があることが明らかになった.