| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-206

栄養利用の不連続性は種の共存を促進するか?

岩田繁英(静岡大学創造科学技術大学院),竹内康博(静岡大学創造科学技術大学院)

植物は様々な戦略をとっている.その中で“植物が摂取した栄養塩量(以降,栄養塩量)に依存する種子の量”は一般的であり直感に即している.本研究ではUjiie et. al.(1991)に基づき,栄養塩量がある閾値までであれば種子繁殖量がゼロであり,閾値以上であれば種子の量が栄養塩量に依存して増加していく繁殖関数を仮定する.そのような繁殖形態をとる植物の多種共存の可能性を数理モデルを用いて探っていく.

本研究では,植物の個体群動態をロッタリーモデル(Chesson and Warner, 1981)により記述し,土壌の栄養塩の動態を追加した数理モデルを用いる.その際に繁殖関数として先述のような関数を用いる(栄養塩量α(≧0)は土壌の栄養塩量xに依存すると仮定する.繁殖を決定する閾値をl(≧0)とすると,種子量β(α(x)))=c (α(x)-g l) (α(x)≧l)  =0 (0≦α(x)<l).ここでc(>0)は単位栄養塩量から作られる最大の種子の量でg(0≦g≦1)は閾値で最大作れる種子からどれだけ種子を生産できるかを決める割合.g=0 であれば効率的に種子を生産できる,1≧g>0であれば効率が悪くなる.).

このモデルの結果として,繁殖関数の閾値が存在して最も効率が悪い場合( g=1)は2種の植物でさえ共存することはできなかった.Gの大きさにより安定的に共存する場合と周期的に変動しながら共存する場合があることがわかった.更に,シミュレーションの結果からもっとも効率的に種子を生産できる場合(g=0)よりも少し効率が悪い(1>g>0にgが存在する)場合に共存する領域が最大になる可能性が示唆される.

日本生態学会