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一般講演(ポスター発表) P3-207
生活排水,工業排水の流入が深刻化する中で,世界各地の湖は「アオコ」の異常発生による水質汚染に悩まされている.「アオコ」の主成分はMicrocystisなどの藍藻類で,富栄養化した湖沼では夏季になるとこれらの藍藻類が大量に発生する.Microcystisなどの藍藻類は動物プランクトンの捕食活動に誘発された群体形成,表水層における光合成と深水層における栄養塩摂取をともに可能にする垂直上下運動など,様々な適応機構を進化させていることも知られている.本ポスター発表では藍藻類異常発生に関わるこれら2つの現象を数理モデル化する.群体形成による表現型可塑性モデルでは富栄養化の進行,すなわち環境収容力の増加にともなって双安定状態が出現することを明らかにする.富栄養化した湖では双安定状態が実現しており,きれいな状態から汚染状態へのcatastrophic shiftによって「アオコ」異常発生が常態化すると考えられる.一方で「アオコ」は初夏の大量発生と秋季の終息,夜間の湖面への上昇と昼間の湖底への沈降という周期の異なる2つの現象によって特徴づけられる.これらの周期現象には光合成によって生成されるグリコーゲンなどの炭水化物が関与し,錘の機能を果たすと考えられている.垂直上下運動の数理モデルではこうした浮力コントロールメカニズムが1次元の反応・拡散方程式に組み込まれ,年周期,日周期の2つの現象を単一モデルによって説明する.さらに汚染された湖沼における「アオコ」異常発生現象を統合的に説明するモデルも提示する.