| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-208

開始時刻が既知の食害に対する最適防御スケジュール

*高橋大輔(京大・生態研センター), 山内 淳(京大・生態研センター)

これまで植物の最適な成長スケジュールに関して、動的最適化法を用いて様々な研究がなされている。その中でも、植食が存在する状況における最適成長スケジュールについては、多くの研究が行われてきた。それら研究の多くは、全シーズンにおいて一様に食害を受ける状況や、各時刻で確率的に食害が発生する状況に注目して進められているが、実際の植食者の振る舞いを考えた場合、シーズン内のある限られた期間において連続的に食害を受ける場合も少なくない。そこで本研究では、ある確率でシーズン内の特定の期間中に植食圧が加わる状況について、ポントリャーギンの最大化原理を用いて解析した。

本研究では、Yamamura and Tsuji (1995) のモデルに即して、栄養器官と防衛器官からなる一年生草本を仮定し、最終時刻での栄養器官のサイズの期待値を最大化する問題を考えた。ただし Yamamura らは、全シーズンを通じて食害を受ける場合を考えていたのに対して、本研究ではシーズンを前半と後半の 2 つに分け、前半では食害が発生しないが一定の確率で後半において食害を受けるとした。解析においては、"シーズン前半"、"植食のなかったシーズン後半"、"植食のあったシーズン後半" の 3 つの場合を区別して成長過程を記述し、最大化原理によって導入される補助変数の値をシーズンの切り替え時刻で平均化することによってそれらを繋ぎ、シーズン全体での最適化を行った。

この解析から、(1) 成長速度が大きくなるとシーズン前半において防御を行わなくなること、(2) 防御の効率が高いときはシーズン前半において防御を行うこと、(3) 植食圧が高い場合はむしろシーズン前半における防御を行わなくなること、といった傾向が明らかになっている。発表においてはより詳細な結果について報告する予定である。

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