| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-209

湖沼における2種藻類競争系のレジームシフトに関する数理モデル

*川口喬(立命館大・理工),中島久男(立命館大・理工)

最近の研究によって、多くの生態系でキャタストロフィックな遷移が起こっているという報告がされている(Scheffer et al. 2001; Folke et al. 2004)。この現象は生態系レジームシフトと呼ばれており、生態系を構成する種間の相互作用が非線形性を持つことから、発生すると考えられている。また、複数の状態が同時に存在し、それぞれがより安定になるような正のフィードバックがかかっていることも、レジームシフトが発生するためには必要な条件である。

湖沼におけるレジームシフトは、研究が最も進んでいる分野のひとつであり、数理モデルを用いた解析例もいくつかある(Yoshiyama and Nakajima, 2002と2006; Genkai-Kato and Carpenter, 2005; 中島, 高村, 2007)。しかし、これらの研究は生態系が一定環境下にある場合の解析であり、変動する環境下にある場合の解析はあまり行われていなかった。ところがNamba and Takahashi(1993)によると、環境が周期的に変動すれば、2種のLotka-Volterra競争系において、3つの安定状態(種1のみ、種2のみ、2種共存)が同時に存在することができ、どの状態に収束するかは初期値に依存するという場合があり得ることが示されている。そのため生態系の環境が一定だったときに比べ、変動している場合の方がより多くの定常状態が同時に存在でき、その結果、よりレジームシフトが発生しやすくなる可能性がある、と予想される。

本研究では季節変動を考慮した湖沼における2種藻類競争系の数理モデルを構築し、環境の変動がよりレジームシフトを引き起こしやすくなる要因となりうるのかどうかの考察を行った。

日本生態学会