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一般講演(ポスター発表) P3-216
葉寿命は葉を展開させてから落とすまでの期間である。葉寿命には長いものも短いものも存在し、葉群は樹木全体のシステムとして、その時間配列と空間配列が統合的に決定されている複雑系である。一枚の葉に着目すると、光合成能力の高い葉を長期間維持すると適応的であるように思えるが、一般に光合成速度と葉寿命にはトレードオフの関係があると言われている(Reich 1992)。
また、葉は段々と老化し、その葉を維持するためのコストと葉の構成コストもかかるため、単純に光合成能力の高い葉を長期間維持することはできないと考えられている。これらの複合的な状況のもとで、葉はその大きな可塑性を利用して最適戦略的に振る舞っていると、最近では認識されるようになり、いくつかの研究が行われてきた(Kikuzawa 1991; Takada et al. 2006)。
本研究では、葉の寿命は炭素獲得量を最大にする最適戦略によって決定されると考え、数値計算を用いて葉の寿命の性質を解析することを目的とする。仮定として、30℃で最大値をとり、5℃以下においては0になる光合成速度曲線を採用した。また、気温の年変動曲線を、平均気温とその振幅を用いたサインカーブのより簡易的に表現し、展葉日数に応じて減少する光合成機能の老化率も仮定として考慮した。
展葉期間中の総炭素獲得量から総維持コストを引いた量が最大になるような展葉日と落葉日を最適展葉、落葉日として、さまざまなパラメーター条件のもとで数値計算を行った。この計算では7つのパラメーターを用い、これらパラメーターに葉寿命がどう依存しているか、を示す。また、維持コストが、一定ではなく、毎日の光合成速度に応じて増えるという場合の葉寿命の変化や、老化率が展葉期間にではなくその期間中の純炭素獲得量によって決定される場合の葉寿命の変化についても示す。